廃棄される魚の皮が美しい革製品に。フィッシュレザーブランド〈tototo〉工房見学レポート

tototoの製品

こんにちは、SDGs百貨店スタッフです。

私たちSDGs百貨店は、製品の背景にある生産者の想いや取り組みを深く知り、ストーリーとしてお伝えするために、実際に工房や生産現場を訪問する活動を行っています。

今回は、富山県氷見市でフィッシュレザーを使ったアイテムを生み出している〈tototo〉の工房を訪れ、代表の野口朋寿さんにお話をうかがいながら、実際の制作工程を見学させていただきました。

普段は捨てられてしまう魚の皮が、どのようにして美しい革製品に生まれ変わるのか。工房で聞いたこと、そして感じたことを皆さまにお伝えします。

港町・氷見市で誕生したフィッシュレザーブランド

氷見の海

▲ 海越しの山々は、氷見市の象徴的な景観

能登半島の付け根部分に位置する富山県氷見市。日本海側有数の漁港があり、古くから漁業文化が根付いている港町です。四季を通じて豊富な魚が水揚げされ、なかでも冬の「ひみ寒ぶり」は全国的なブランドとして知られています。

豊かな海、そして山に囲まれたのどかな場所に、今回私たちが訪れた〈tototo〉の工房があります。

tototo 野口さん

▲ 代表の野口朋寿さん。香川県出身で、大学進学を機に富山県へ。2018年、氷見市地域おこし協力隊としての活動を開始し、2020年にフィッシュレザーブランド〈tototo〉を設立。

ブランド名の〈tototo〉は、富山弁で魚を意味する「魚々(とと)」に「〜と」を加えた「魚々と」が由来。「魚々と私たちが共存する豊かな未来を創っていく」という想いが込められています。

フィッシュレザーの原料として使用しているのは、本来捨てられるはずだった魚の皮。生命の恵みを無駄にしないものづくりを大切に、フィッシュレザーを使った新しいライフスタイルを提案しています。

試行錯誤の末に確立した、レザーへの加工技術

野口さんがフィッシュレザーの制作を始めたのは、大学時代のこと。富山県内の大学で漆工芸を学びながら、趣味としてレザークラフトにも取り組んでいたそうです。漆と革を組み合わせた作品を模索するなかで、より幅広い表現を求め、「皮」を「革」に加工する技術そのものに興味を持つようになったといいます。

しかし、動物の皮は簡単に入手できるものではありません。身近で手に入りやすい生の皮として、野口さんはスーパーで売られている「魚」に目をつけました。もともと魚が好きだった野口さんは、当時フィッシュレザーを日本で作っている人がいないことを知り「自分で作ってみたい」と思ったのだとか。

tototo 野口さん

▲ 「魚のにおいが抜けなかったり、皮がボロボロになってしまったり、最初はなかなか上手くいきませんでした」と振り返る野口さん

フィッシュレザーの開発は想像以上に難航。失敗を繰り返しながら少しずつ改良を重ね、3年の歳月をかけてようやく丈夫でしなやかなフィッシュレザーが完成しました。2020年4月、自社ブランド〈tototo〉を立ち上げ、今日に至っています。

皮の加工から縫製まで、すべてを工房内で手がける

フィッシュレザーの誕生秘話をうかがったあと、制作工程についても教えていただきました。

まず、原料となる皮は、地元の魚屋さんや水産加工会社から廃棄される予定のものを譲り受けます。刺身などに加工する過程で皮が取り除かれるため、ブリ、タイ、サケなど食卓でも馴染みのある魚が必然的に多く集まるそうです。

tototo 魚の皮は冷凍して保管

▲ 魚の皮は冷凍して保管しているそう

野口さんが「最初の工程にして一番大変」というのが、皮についた身や脂を削ぎ落とす作業です。酸化すると生臭さの原因となってしまうため、一枚一枚丁寧に手作業で処理していきます。

脂身を取り除いた皮は塩漬けにして乾燥保存。その後、洗濯機でさらに脂分や汚れを取り除きながら漂白します。この作業を繰り返すことで、魚の生臭さがなくなり、素材として活用できる状態になります。

tototo 洗濯機

▲ 工房内には、魚の皮を洗浄・漂白するための洗濯機がたくさん並んでいました

続いては、レザーにする上で欠かせない「なめし」と呼ばれる工程です。タンニンの液に漂白した魚の皮を漬け込むことで、皮の繊維が引き締まり、丈夫でしなやかなフィッシュレザーに仕上がります。

色を染め上げたら、いよいよ製品として形にしていきます。

カラフルなフィッシュレザー

▲ カラフルに染められたフィッシュレザー

「皮の加工から縫製まで、一貫して手がけているのは全国でもここだけかもしれません」と野口さん。繊細な縫製作業は、科学実験のようなレザーの制作過程とはまったくの別物です。
使いやすさと美しさにこだわり、1針1針丁寧に縫い合わせています。

tototo 工房見学

▲ 野口さんの話を聞く、SDGs百貨店スタッフと工房見学の参加メンバー

フィッシュレザーの制作期間は1か月ほど。縫製まで含めると2か月はかかるそうです。その手間ひまを知ると、製品の価値がより深く感じられました。

環境に優しい持続可能なものづくりに挑戦

フィッシュレザーの開発に至るまでの過程で、野口さんは魚を取り巻く環境問題、そしてレザー産業の現実に直面したそうです。

まず、私たちが普段食べている魚は、一匹のうちの大部分が廃棄されているという現状があります。一部は魚粉に加工して再利用されることもありますが、皮や骨は焼却処分されることがほとんどです。〈tototo〉は、廃棄される魚の皮をフィッシュレザーに加工することで、資源の有効活用を実現しています。

近年は、野口さんの取り組みに共感した県内外の人から「ぜひフィッシュレザーに使ってほしい」と魚の皮が送られてくることがあるそうです。過去にはチョウザメやトラフグ、リュウグウノツカイといった難易度の高い皮の加工に挑戦したことも。「珍しい魚を見ると試してみたくなります」と野口さんは笑います。

tototo フィッシュレザー

▲ さまざまな魚の皮で作ったフィッシュレザーを見せていただきました

また、現在流通している革製品の80%は、クロムという化学薬品を使って加工されています。簡単に染色できる、生産コストが抑えられるなどの理由から広く使われていますが、廃棄時に燃やすと有害物質が出るという重大な問題が潜んでいます。

一方〈tototo〉では、植物タンニンを使った加工にこだわっています。環境への負荷が少ないことはもちろん、タンニンでなめされた革は使い込むほどに色や質感が経年変化し、味わい深くなっていくのが特長です。

tototo ミモザタンニン

▲ 〈tototo〉では植物のミモザから抽出した「ミモザタンニン」を使用しているそうです

フィッシュレザーを作るには、時間も手間もコストもかかります。ですが、野口さんはこうした問題に目を背けず、環境に優しい持続可能なものづくりに挑み続けているのです。

唯一無二の存在感を放つフィッシュレザー小物

〈tototo〉では、財布、カードケース、キーホルダー、スマホケース、腕時計など、生活に寄り添ったアイテムを展開しています。

tototoの商品

▲ 〈tototo〉が展開するアイテムの数々

製品の魅力は、なんといっても魚ならではの美しい鱗模様。浮き上がるような模様には、ほかの動物にない独特の存在感があります。ブリの細かい模様やタイの力強くダイナミックな模様など、魚の種類や個体によっても表情はさまざま。どれも一点ものの味わいを持っています。

なかでも「出世魚」として知られるブリの革を使った製品は、就職祝いや誕生日祝いなど、プレゼントとして人気が高まっています。人と被らないフィッシュレザーの小物は、ビジネスシーンでの話題作りにも一役買ってくれそうです。

tototo ブリレザーの二つ折り財布

▲ シンプルながら実用性の高いデザインに設計されています

「魚の革」と聞くと、においや使い心地が気になる方も多いでしょう。実際のところ、魚特有の生臭さはなく、むしろ革製品らしい落ち着いた香りが感じられます。強度も十分で、メンテナンスの仕方も一般的な牛革とほぼ変わりません。使うほどに手に馴染み、エイジングが出てくるのも革製品の魅力。世界にたった一つのフィッシュレザーが、日々に彩りと豊かさを与えてくれるでしょう。

まとめ

〈tototo〉の製品には「生命の恵みを無駄にしない」という確かな使命と、唯一無二の美しいデザインが共存しています。

実際に野口さんからお話をうかがい、制作の現場を拝見したことで、ブランドコンセプトが言葉だけでなく日々のものづくりにしっかりと息づいていることが伝わってきました。
フィッシュレザーは、これからのライフスタイルに新しい選択肢を与えてくれる存在となるでしょう。

私たちSDGs百貨店は、今後もこうした生産者の想いを大切にしながら、お客様に価値ある製品をお届けしていきたいと考えています。

ブランドについて

〈tototo〉について

tototoは漁業文化が息づく富山県氷見市を拠点に、「生命の恵みを無駄にしない持続可能なものづくり」を大切にするフィッシュレザーのブランドです。
ブランド名には、魚を指す“魚々”(とと)という言葉に1文字“と”を加えて、“魚々と”私たちが共存する、より豊かな未来を創っていくという思いが込められています。